ラーメン山岡家 高崎中尾店に初めて入ったのは、特別な理由があったわけではない。友達に誘われたわけでも、誰かの投稿を見たわけでもない。ただ、夜の国道を車で走っていて、ふと目に入った赤い看板に引き寄せられた。
「吸い込まれるように入ってしまうとは、このことか」
その時の自分は、まさにそんな感覚だった。
あの外観には独特の“誘い”がある。深夜でも明るい赤い看板、広い駐車場、そしてガラス越しに見える湯気。群馬に住んでいると、どこかで必ず目に入る風景。それまでは気にはなりつつも、入る勇気が少しだけ足りなかった。
でもその日は、なぜか「ちょっと行ってみるか」という気分になった。特別な理由なんてない。ほんの軽い好奇心。それだけで初めての山岡家が始まった。
店に入ると、まず豚骨の香りがガツンと来た。人によっては好みが分かれる強い匂い。でもその時の自分には、なぜか心地よく感じた。券売機の前で「醤油か、味噌か、特製味噌か」と少し迷いつつ、最初はベーシックに醤油を選んだ。
カウンター席に座ると、厨房からリズムよく響く麺上げの音、湯気の立ち方、店員のテンポのいい動き。それらがひとつの風景としてまとまっていて、初めてなのに“落ち着く”。山岡家の魅力のひとつは、この独特の安心感だと思うのですよ。
運ばれてきたラーメンを見た瞬間、「思ったより迫力あるな」と感じた。濃厚なスープ、分厚い海苔、存在感のあるチャーシュー。そして最初の一口をすすった瞬間に、完全にハマった。
「なんだ、めちゃくちゃうまいじゃないか」
濃厚だけどどこか優しい。不思議と背中を押されるような力のある味。仕事で疲れた日の夜に食べたこともあって、その一杯が体に染み渡っていくようだった。
あの日の“軽い好奇心”は、気づけば習慣になっていた。
夜に悩んだとき、疲れたとき、何かを考えたいとき。
車を走らせていると自然と山岡家に向かってしまう。気づけば「行きつけ」と呼べる回数を重ねていた。
山岡家 高崎中尾店は、いわば私にとって小さな避難場所のような存在だ。気取らず、静かすぎず、騒がしすぎず、ひとりで入りやすい。深夜でも明るく迎えてくれて、何も話さなくても、席に座れば何となく心が落ち着くのだ。
最初のきっかけは本当に些細なものだった。
ただの“軽い好奇心”。
でも人生の多くは、そんな小さな一歩から思いがけない習慣が生まれる。
今でも国道17号を走る夜、赤い看板が目に入ると「そろそろ寄っていくか」と思ってしまう。あの一杯から始まった小さな日常が、気づけば自分の中で大きな存在になっていた。
そして今日もどこかで、誰かが同じように“軽い好奇心”で山岡家の扉を開けているのだろう。


コメント