七面鳥の丸焼きを初めて食べた日のことは、今でもはっきり覚えている。スーパーで見かけることは少ないし、日本の食卓に並ぶ機会もほぼない。クリスマス映画でよく見るあの巨大なローストを、自分の家でついに焼いて食べたのだ。重さは約4kg。冷蔵庫に入れるだけでも一苦労だった。解凍に丸一日、下味に半日、そして焼き上げに3時間以上。調理前の時点で、七面鳥を食べるという体験はすでにイベント化していた。
下味はシンプルに、塩・胡椒・ニンニク・オリーブオイル。丸鶏とは違い、肉は巨大で脂が少ない。そのためバターを皮の下に忍ばせた。オーブンで焼いている間、部屋いっぱいに広がる香ばしい匂いはチキンよりもほんのり甘く、期待が自然と高まった。
焼き上がりは圧巻。きつね色の皮がパリッと輝き、刃を入れると肉汁がじわっと広がる。ただ、食べてみてまず感じたのは—「想像より淡白」ということ。鶏肉よりも繊維が太く、パサつきやすい。胸肉はとくに顕著で、ローストビーフのようにスライスして食べても、水分が少ないため口の中の水分を持っていかれる。逆に、モモ肉や脚の部分は程よい脂があり、噛むほどに旨味が出て美味しい。七面鳥は部位によって感動ポイントが違う鳥なのだと気づいた。
味のイメージとしては「鶏肉と豚ヒレ肉の中間」。鶏ほどジューシーではなく、豚ほど重くない。淡白ゆえに、ソース次第で味が化ける。グレービーソース、クランベリーソース、照り焼きダレ…試した結果、個人的No.1はバター醤油。日本人の舌に合うし、ご飯のおかずにもなる。パンと合わせると海外映画のワンシーンのようで気分まで楽しくなる。
1羽は多い。食卓に並べても食べきれず、翌日からはリメイク祭り。スープ、サンドイッチ、チャーハン、親子丼風までやってみた。淡白な肉はアレンジ向きで、むしろ翌日からが本番だったといってもいい。
食べ終えた時の達成感は大きかった。七面鳥は「食材」ではなく「イベント」だ。時間も手間もかかるが、作る過程までも含めて楽しい。家族や友人とワイワイ食卓を囲むのにぴったりで、1人でもじっくり向き合う料理として面白い。普段の食事では味わえない体験がそこにあった。
結論:七面鳥は美味しい。ただし胸肉は淡白。ソースと工夫が鍵。
そして、何より「焼くまでのワクワク」が最高だった。


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