【体験談】信用金庫の昼休憩は車の中でお弁当。外の世界と切り替えるちいさな逃避と幸せ|SoloEat

Solo Home Meals(家でひとりごはん)

信用金庫で働いていた頃、私の昼休憩はいつの間にか**「車の中で弁当を食べる30分」**に落ち着いていた。
最初は休憩室で食べようと思っていた。でも、あの小さなテーブルと沈黙の空気。会話の流れに入れず、誰かと食べること自体が少し負担だった時期がある。
そんなとき、ふと外に出て車に戻ってみた。窓の向こうには太陽、エンジン音もない静けさ。シートに腰を落とすと、不思議と体の力が抜けた。

車の中で開ける弁当。コンビニで買った唐揚げ弁当の日もあれば、自作で詰めた卵焼きの日もある。
カチャッと箸の袋を破る瞬間、気持ちが仕事から離れていく。社内にいるときより、味がよく分かる気がする。狭い空間なのに、なぜか自由だ。
信号待ちの車が走り去り、遠くで工事の音がする。誰に見られるわけでもなく、会話を合わせる必要もない。これは私だけの昼休みだと思えた。

冬はシートヒーター、夏は窓を少し開けて風を入れる。
助手席に飲み物、ダッシュボードにミニうちわ、膝の上に弁当。
おかずの唐揚げを一つ口に入れて、ため息のような息がこぼれる。
「ふーっ、うまい。」
それだけで救われた。

同僚に合わせて気を遣いながら食べる昼食も、嫌いではなかった。情報交換にもなるし、笑える日もある。
でも毎日では疲れてしまう。
静かにひとりで食べる時間が欲しい日もある。
そんな気持ちを満たしてくれたのが車の中だった。

思えばソロ飯って、料理や外食の豪華さじゃない。
「自分のペースで食べられるか」「心が休まるか」
その2つが大きい。
車ランチは、仕事モードから自分モードに切り替えるための小さな避難場所だった。
スマホでYouTubeを流したり、カフェラテを飲んだり、ときにはエンジンを切って目を閉じる。
食の時間以上に、休みの時間だった。

午後の業務が始まる直前、空の弁当箱を片付けて車を降りると、足取りが軽くなっていることが多かった。
トイレで弁当をつついていたあの頃より、ずっと前向きになれた。
逃げ場ができたことで、仕事にも意外と集中できるようになったのだ。
人は案外、小さな「拠点」を持つだけで変われる。

車の中でお弁当。誰にも邪魔されず、好きなタイミングで一口食べられる幸せ。
寒い日にはスープジャーで味噌汁を持っていくと最高だし、夏は保冷バッグに入れたおにぎりと麦茶が沁みる。

きっと今でも、どこかの会社の駐車場でひとりご飯を楽しむ人がいるはずだ。
それは寂しい時間なんかじゃない。
自分を休ませるための、静かな贅沢な時間。

車内弁当は、ソロ飯の入り口としては十分すぎるほど良い。
外食に挑戦できなかった頃の私を救ってくれた、あの小さな車の中の食卓を、今でも少し誇りに思う。

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