1.味──B級だけど、妙にクセになる
渋川高校の学食メニューは、とにかく分かりやすい。
カレー、ラーメン、焼きそば、うどん、日替わり定食。どれも“ザ・学食”。
でも、よく思い出すとそれぞれに個性があった。
一番人気は鉄板カレー。
ルウは市販ベースなのに、妙にスパイスが効いていて、油のコクもある。
ご飯は若干やわらかめ。だけど、あの“ちょっと水多め”な感じが、部活帰りの身体にはなぜかちょうどよかった。
トロトロでもサラサラでもない中間のとろみで、「3分でかき込める設計」になっていたのが学食らしい。
ラーメンは、スープが薄そうに見えて意外と塩分強め。
チャーシューはペラペラ、麺はやや伸び気味。でも不思議と、テスト期間にだけ食べたくなる。
あの“ちょっと物足りない感じ”込みで、渋高ラーメンというジャンルだった。
2.価格──財布に優しい、でも地味に悩ませてくる
当時の価格設定は、カレーが250〜280円前後、ラーメンも似たようなライン。
小遣いの少ない高校生にとってはありがたい数字だが、「カレー+コロッケ追加」にすると一気に予算オーバーになる絶妙な設定だった。
だからこそ、昼休み前の教室では毎日プチ会議が開催される。
「今日はカレー単品で我慢か…」
「いや、パンを売店で足して炭水化物2刀流にしよう」
この“100円の攻防戦”こそ学食経済学。
今振り返ると、渋高の学食は、金銭感覚と腹の満足度のバランスを学ぶ訓練場でもあった。
3.雰囲気──うるさいのに、なぜか落ち着く空間
昼休みの学食は、いつも軽いカオス状態だ。
サッカー部が奥の席を占拠し、吹奏楽部が譜面を広げ、女子グループがデザートをシェアしながら笑っている。
ざわざわとした話し声、食器のぶつかる音、カレーの匂い、揚げ物が上がる油の音。
でも、その雑多な空気がなぜか落ち着いた。
「ここにいれば、とりあえず自分の居場所はある」と思わせてくれる温度があった。
窓際の席からは、中庭と赤城山のラインが少しだけ見える。
雪の日なんかは、外の寒さと学食の湯気のコントラストが、いまでも写真みたいに頭に残っている。
4.ひとり飯適性──実はソロに優しい設計だった
渋高の学食は、テーブルが4人掛け中心だったが、端っこの席は完全にソロ仕様だった。
壁に向かって座れる一角や、柱の陰になっている席。
そこは「ひとりで静かに食べたい派」が自然と集まるゾーンだった。
教室のノリが苦手な日、部活でちょっと気まずい出来事があった日。
そんな日は、トレーを持って学食の端に避難する。
カレーをすくう音だけが聞こえる小さな島で、誰にも話しかけられず、でも周りには同じようにひとり飯をしている奴らがいる。
あの距離感が、当時の自分を何度も救ってくれた。
SoloEat的に言えば、渋高の学食は**「ぼっちを包み込むタイプの群れ空間」**だったと思う。
5.まとめ──渋高学食は、胃袋と心を同時に鍛える場所だった
味は星5つ中3つ。
でも、思い出補正を含めると体感8つくらい。
- 安くて腹いっぱいになるカレー
- ちょっと薄いけど、なぜか忘れられないラーメン
- 100円単位の葛藤を生む価格設計
- 騒がしいのに、ソロも受け入れてくれる空気
渋川高校の学食は、
「食べる練習」「ひとりで過ごす練習」「誰かと分け合う練習」
を全部まとめてさせてくれる場所だった。
もし今、当時と同じメニューが復活したら、きっと大人買いしてしまうだろう。
カレーとラーメンを両方頼んで、窓際の席で赤城山を眺めながら、ひとりでゆっくり食べたい。
あの頃より少しだけ豊かな財布で、
でも同じように、あの学食の湯気の中に座っていたい。


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