高崎中泉にあるラーメン店「ホームラン軒」。名前を聞いた瞬間から、どこか昭和の香りがする。初めて訪れたのは、仕事帰りの平日の夜。疲れた身体にラーメンを流し込みたい日ってある。そんな時に、ふと目に入った赤い看板。気づいたらハンドルを切っていた。「今日はここでいいや」じゃなくて、「ここがいい」。店前の雰囲気がそう思わせた。
店内に入ると、油の香り、湯気、食欲を刺激するBGMのような鍋の音。カウンター席に腰を下ろし、メニューを見た瞬間、直感的に「もやしメン」を頼んだ。どうしてかわからないけど、この日は野菜を身体が欲していたのかもしれない。注文してからの待ち時間は短め。湯気をまとって現れた丼は、どこか懐かしいビジュアル。派手さはない。だけど、シンプルで力強い。
スープを一口すすると、醤油のまろやかさとラードのコク。優しいのに、芯のある味。麺をすすると、熱々のもやしのシャキッとした食感が絡んでくる。もやしの甘さとスープの塩気が合う。これだよ、こういうのでいいんだよ。いやあ、こういうのがいいんだよって心の中で呟いた。
食べ進めるうちに身体がじんわり温まり、仕事でガス欠だった脳が復活していく感覚があった。派手なトッピングはないけど、量は十分。もやしが山のように盛られていて、噛むたびにシャキシャキと音を立てる。シンプルで、まっすぐで、ごまかしのないラーメン。気取らないのに、ちゃんと美味い。そういうラーメンって、記憶に残りやすい。
店の雰囲気も良かった。常連っぽい客が静かに食べていたり、家族連れが談笑していたり。肩肘張らずに入れる店は貴重だと思う。気づけばスープまで完食していた。胃も心も満たされる一杯。ラーメンを食べに行ったのに、なんだか「今日も頑張ったな」と自分を褒められた気がした。
今思えば、あの夜はただ腹を満たしたかっただけじゃない。誰にも気を使わず、湯気の向こうでぼーっとしながら自分に戻る時間が欲しかったんだと思う。ラーメン一杯で救われる夜がある。ホームラン軒のもやしメンは、そんな夜の味だ。
また行くなら次は味噌か、チャーシューメンも試したい。でも、結局もやしメンに戻りそうな気がする。それくらい好きになった。高崎中泉でどこに行くか迷ったら、ぜひ一度ホームラン軒を思い出してほしい。きっとあなたにも、じんわり染みる一杯になるはず。


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