子どもの頃、駄菓子屋の棚で光って見えたのが「コーラアップ」だった。透明の袋にコーラ瓶の形をしたグミが並ぶあの姿。噛むとキュッと締まった噛みごたえと、口に広がる濃いコーラ味。大人になった今でもふと恋しくなる、あの昭和〜平成の記憶が詰まった味だ。
この「コーラアップ」、実は日本初のグミとして1980年に誕生した。グミといえば今でこそ100種類以上のラインナップが並ぶが、当時は未知のジャンル。ゼリーでもキャンディでもない不思議な感触。それが“新しいお菓子文化”として火をつけた。だが、順風満帆だったわけではない。1997年、一度市場から姿を消す。時代の好みの移り変わり、トレンドの波にのまれたのだろう。
ところが、ここで終わらないのがロングセラーたる理由。2008年――コーラアップは復活した。 しかも当時の味をそのまま再現しただけでなく、現代のニーズに合わせて改良され、さらに近年では「コーラアップ ザ ハード」という噛みごたえ重視のシリーズまで展開。硬い系グミが好きな人間にはたまらない進化だ。袋を開けた瞬間のコーラ香、噛むと顎が少し疲れるくらいのハード食感。平成の昔では味わえなかった“パワーアップ版”がそこにある。
実際に久しぶりに買ってみた。袋を破ると、あの懐かしいコーラの匂いがふわりと立ち上る。まず1つ口に放り込む。硬い。想像より硬い。でもこの噛み応えがいい。咀嚼するたび旨みがじわっと広がって、甘さと炭酸感の再現が面白い。あぁ、これこれ。小学生だった頃、放課後に友達と分け合った思い出が一気に蘇る。
面白いのは、時代が変わってもグミの立ち位置が変化しながら生き残ってきた点だ。1970年代後半〜80年代に広がりはじめ、90年代で確立、2000年代で消え、2008年に再覚醒。そして令和の今、健康志向の間にあっても「噛みたい欲」と「懐かしいコーラ味」という需要に刺さり続けている。コンビニのお菓子コーナーに行けば多種多様なグミが並ぶ中、今も“ど真ん中に陣取る”存在感。長年ファンが離れず、新規も取り込みながら生き延びてきた稀有なブランドだと思う。
もしまだ最近食べていないなら、ちょっと試してほしい。特に「ザ ハード」は顎にガツンと来る。仕事中のリフレッシュにも良いし、夜の映画のお供にも合う。大人になってから食べると、あの頃より味がはっきりして感じるのも面白い。昔の自分と今の自分を一緒に噛んでいるような、ちょっと情緒ある時間になる。
コーラアップの歴史を振り返ると、ただのお菓子じゃなく「文化の遺産」に近い。発売→終了→復活→継続。まるで時代と一緒に往復してきた人生経験豊富なグミだ。同じ味を再び噛めるという幸せ。これは令和に生きる僕らの特権かもしれない。
今日もまた袋を開ける。あの懐かしい香り。指先に残る糖衣の感触。噛むごとに響く弾力。
一粒で、昔の記憶まで蘇る。
コーラアップは、今も現役だ。


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