「山岡家って、匂いがキツいよね。」
そう言ったのは、以前いっしょにご飯へ行った女友達だった。
特に高崎の中尾店は“店を出たあとも服に匂いが残る”とまで噂していて、正直、私も最初はちょっと身構えていた。
でも、どうしても豚骨のこってりした一杯が恋しくなる日がある。
仕事帰りにぽっかり空いた時間、ふとあの赤い看板が目に入った。
「まあ、一回入ってみるか。」
そんな軽い気持ちで足を踏み入れたのが、高崎中尾店との出会いだった。
結論から言うと——
女友達が言っていたほど“匂い問題”は気にならなかった。
もちろん、ラーメン店らしい香りはある。
豚骨の湯気、スープの香ばしさ、ニンニクのパンチ。
ただ、それらが混じって「息が苦しい」と感じるほどではなかった。
むしろ、思っていたより店内は明るくて清潔感がある。
卓上の調味料や水回りがきれいに整えられていて、ラーメン屋特有の“油っぽさ”をそこまで感じない。
換気も効いているのか、空気がこもったような印象もなかった。
注文したのは、安定の 醤油ラーメン+海苔増し。
食券を置いた瞬間に聞こえてくる、厨房の元気な声と麺を上げる音が心地いい。
深夜でも誰かしらがいるのが山岡家の魅力だが、この日も仕事帰りの人や学生がぽつぽつと席を埋めていた。
一口スープをすすった瞬間、思わず笑ってしまった。
「やっぱり山岡家は山岡家だな…」
あの濃厚で、少しジャンキーで、でもどこか落ち着く味。
こってりなのに、なぜかまた食べたくなる中毒性がある。
そして驚いたのは、店を出たあと。
外へ出た瞬間、冷たい風がふわっと服を通り抜けたが、
思っていたほど匂いが残っていない。
確かに少しは香りが付いているけれど、
“電車で気になるレベル” とか “誰かに指摘されるレベル” ではなかった。
多分だけど——
山岡家の「匂い問題」は、好き嫌いがはっきり分かれる世界なんだと思う。
匂いに敏感な人には強く感じるし、慣れている人には普通。
女友達は控えめな食事や香りを好むタイプだったので、余計に気になったのかもしれない。
個人的には、山岡家高崎中尾店は “気楽にひとりで寄れる安心の一杯” という印象が強い。
カウンター席の配置も広めで、ひとりでも入りやすい。
夜遅くでも明るい店内は、外食に迷った時の“最後の駆け込み場”みたいな安心感がある。
店を出て車に戻る時、ふと空を見上げると、
高崎の夜は思ったより静かだったのだ。
ラーメンの余韻と、ほんの少しのにんにくの香り。
でも、その香りがむしろ背中を押してくれるような気がした。
「また来よう。」
そんな言葉が自然に口をついて出た。
山岡家は匂いの好みこそ分かれるが、
私にとっては “疲れた日に食べたい安心のラーメン屋” のひとつになっている。


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