10代の頃、私はセブンイレブンで深夜バイトをしていた。
慣れてくると、夜勤には夜勤ならではのリズムがあって、店長も社員もいない静かな時間を自分たちで回す感覚が少し楽しかった。
そんな深夜シフトの楽しみのひとつが、**“廃棄商品を無料でもらえること”**だった。
コンビニの商品は賞味期限が厳しく、時間がすぎたものはすべて廃棄扱いになる。
売り場から下げた瞬間、それは商品ではなく“ゴミ”になる。
しかし、当時の職場では、その“ゴミになる直前の食べ物”をスタッフ同士で分け合う文化があった。
例えば、夜の11時をすぎると、おにぎりやサンドイッチの廃棄が出はじめる。
私は袋を開けながら、「今日の夜食はこれか」と心の中で軽くガッツポーズをしていた。
シフト仲間と分け合いながら食べるおにぎりは、不思議とどれも美味しかった。
特にありがたかったのが、パスタ・弁当・揚げ物類。
仕事終わりに家で温め直して食べると、深夜の空腹に染みる味だった。
学生の私にとっては“食費がほとんどかからない生活”になっていた。
もちろん、今では多くのコンビニが廃棄品の持ち帰りを禁止している。
衛生面や転売防止、企業ルールの徹底など理由は色々ある。
しかし私が働いていた時代は、店長も何も言わず、
「廃棄出たよー。好きなの持ってって」
と、ほぼ日常業務の一部のように扱われていた。
深夜のバックルームで、仲間たちとコロッケや唐揚げをつまみながら、
「今日もお疲れ」なんて話していた時間は、地味に楽しかった。
いま思い返すと、あの頃の廃棄グルメは、単に“無料で食べられた”というだけじゃない。
バイト仲間と自然に仲良くなるきっかけであり、
夜勤の孤独感を少しだけ柔らげてくれるものだった。
コンビニ飯は、普通に買って食べる今の方がもちろん美味しい。
けれど、深夜の店内でこっそり食べたあの味は、どこか特別だった。
もしあなたが昔コンビニでバイトしていたなら、
きっと同じような思い出があるのではないだろうか。


コメント