2023年のある日、仕事帰りにふと「ホルモンが食べたい」と思った。
身体が塩分と脂を求めていたのか、胃の奥にじんわりと渇きがあった。そんな時に向かう場所といえば、前橋の ぷるぷるホルモン元総社本店。
ここには、妙に “帰ってきた感” がある。
店に入ると、炭の香りがふわっと漂ってくる。
焼ける音、タレの匂い、換気扇の微かな唸り声。
ホルモン屋特有の “ガヤガヤ感” があるのに、どこか落ち着く。
この店の特徴は、実は ひとり客がとにかく多い ことだ。
2023年はとくにそれが顕著で、週末でも平日でも、カウンター席を見るとかならず数人のひとり客が並んでいた。
私もその1人で、気づけば 月2回は通っていた。
「焼肉=複数人」という昔の固定観念は、ここでは通用しない。
カウンター席に並ぶのは、
仕事帰りの作業服の男性、
黙々と焼く女性、
携帯で動画を見ながら焼く人、
一人酒を楽しむ中年。
あらゆる “ひとり” が自然と混ざりあう、不思議な空間だ。
席に案内されると、鉄板と七輪の距離がちょうど良い。
私は毎回のように 「ぷるぷるホルモン」 を注文する。
名前の通り、焼く前から脂が透明に光り、火に落ちるたびパチパチと小さく弾ける。
タレをくぐらせて口に入れると、じゅわっと旨味が広がって、疲れがふっと抜ける感じ。
ホルモンって、なぜか “孤独と相性がいい” 食べ物だ。
噛みしめるたびに、今日あったことが少しずつ溶けていくような気がする。
周りを見渡すと、ひとり客たちは驚くほど静かだ。
スマホを見ている人もいれば、ただ目の前の肉を見つめている人もいる。
だけど誰も寂しそうじゃない。
むしろ“ここに来て、ひとりで食べられる喜び”を噛みしめているように見える。
ひとり焼肉は、もう特別なことじゃないですね。
人に気を使わず、自分の焼きたいペースで焼き、好きなタイミングで食べる。
誰かの皿に気を配る必要もないし、会話の間を読む必要もない。
その自由さが、ひとり飯の心地よさを最大限にしてくれる。
私は2023年の1年間、ずっとこの店に支えられていた気がする。
疲れた日、成功した日、なんでもない日——
どんな日でも、ここに来れば“自分だけの時間”を取り戻せた。
ひとりで食べるホルモンには、静かな力がある。
「また来よう」と思いながら、脂のついた網を見つめる時間が、
なんだか好きだった。


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