2025年の初め、用事があって渋川の信用金庫へ寄った日。手続きを終えて外に出ると、少し冷たい風が頬にあたった。時間はまだ昼前、ちょうど「何か温かいものが食べたいな」と思い始める頃だった。目の前の道路を渡った先には、ガスト渋川店。看板が見えるだけで、なんとなく安心する。チェーン店の良さは、味の想像ができること。ハンバーグ、ドリンクバー、ランチセット…。頭の中で選択肢は広がっていくのに、足はその場から動けなかった。
「ひとりで入って変じゃないかな?」
そんな思いがふとよぎる。ソロ活が広まりつつある時代とはいえ、店に入る瞬間は今でも少し勇気がいる。特にファミレスは家族連れが多いイメージがあって、ひとりでテーブル席に座る自分を想像すると、胸の奥がむず痒くなる。周りの目を気にしすぎているのかもしれない。だけど、そう簡単に割り切れないのが人間だ。
信号待ちの間、スマホでメニューを見てみた。日替わりランチはコスパが良さそうだし、スープバーが付くのも魅力的。ドリンクバーを付ければ、パソコンを広げて作業もできる。そう考えた途端、「入ってみてもいいのかもしれない」という気持ちが少しだけ強くなった。
でも、次の瞬間、また自分の中の声が止めにかかる。
「もし混んでいたら?席は近距離。隣の会話が気になるかも。」
「注文に迷って、店員さんを待たせたら申し訳ない。」
考えなくていいことまで考えてしまう。ひとり外食は、食事以上に自分のメンタルと向き合う行為だと改めて気づく。
結局その日は、ガストの前まで歩いて、入り口手前で立ち止まったし。「また今度でいいか」と思って、店には入らなかった。だけど家に帰ってから少しだけ後悔した。「あの時、入ってみれば違う景色が見えたかもしれない」と。ひとりの一歩は小さいけれど、その小さな一歩で人生の密度が変わると感じた日だった。
今なら言える。たぶん、入ってみてもよかった。誰もこちらを気にしていない、ひとりで食べる時間は想像以上に心地よいはずだ。次に信用金庫へ行く時は、少し勇気を出してガストのドアを開けようと思う。ひとりで食事をする経験は、自信にもなるから。小さな挑戦は、大きな成長につながる。
もしこの記事を読んで同じように迷った人がいるなら、伝えたい。「迷ったら、入ってみてもいい。」ひとりの食事は寂しさではなく、自分と向き合う静かな贅沢だ。ファミレスのざわめきの中で、コーヒーを飲みながら自分のペースで過ごす時間は意外と悪くない。こんな小さな勇気を積み重ねながら、私はまた一歩、“ひとりを楽しむ”人間になっていく。


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